お知らせ

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フィリピン派遣での手洗い普及活動実践報告 –大学等との外部連携も−
フィリピンをフィールドとするSGHの課題研究の一つとして、公衆衛生のテーマで探究活動を行っている生徒達がいます。 フィリピンで「子どもの感染症が多い」というデータを目にした生徒達は、「正しい手洗いの方法を楽しい歌を通して子どもたちに普及させ、感染症対策につなげる」という取り組みを考えました。
その企画段階から現地で実際に普及活動を実施するまでの取り組みの様子を紹介します。
■情報収集から企画まで
・公衆衛生や衛生教育に関する調べ学習
まず、フィリピンの衛生事情や感染症等についてメンバーそれぞれが情報を収集・共有する調べ学習を行いました。世界やフィリピンの衛生環境のこと、感染症のこと、子どもに効果的な指導手段のことなど、それぞれ分担をして企画に対する知識を広げていきます。

公衆衛生グループの調べ学習の様子
・現地での活動計画の具体化
その学びを踏まえて、フィリピンに派遣に参加する生徒を中心に、実際の手洗い普及活動の企画を詰めていきました。内容は、手洗いの大切さを伝えるミニ講座と子ども達との手洗い歌の実践を合わせたものになり、さらに普及活動実施後には効果を調査するアンケートも加えることにしました。

ワークショップ企画検討中
・外部の専門家の方への相談
生徒達は企画を進めていく中で「専門家の方々に相談をしたい」という考えを持ちました。そこで、杏林大学医学部衛生学公衆衛生学教室の谷口善仁先生ほか、衛生教育やフィリピンでの活動等の各方面で活躍されている先生方へ相談をさせていただくことにしました。

大学の先生にメールを使って相談
大学や外部の先生にメールで連絡をする、ということもほぼ初めての体験となり、資料作りからメール文面の作成まで、皆でひとつひとつ取り組みました。メール送信には緊張しているようでしたが、早々に先生方からとても丁寧なご回答をいただけ、大変感激していました。高校生にも理解できるよう噛み砕かれた内容で書いていただいたものを読み、一つ一つ納得をしたり悩んだりしながら、企画に取り入れようと試みていました。
⇒杏林大学のホームページにも掲載していただいています
「医学部衛生学公衆衛生学教室の谷口善仁教授が順天高等学校の生徒にフィリピンでの手洗い歌について指導」
外部の先生方からのアドバイスを受けて、自分達の考えへの後押しを得られたことからより自信をもって進められるようになったり、自分たちには無かった視点や苦戦していたポイントへの指摘や助言を取り入れてさらに頭を使うなど、考えや行動の深まりが見られました。
杏林大学の谷口先生からも「アドバイスの中には、高校生が限られた時間の中で実施するにはハードルが高いものも含まれていたと思うのですが、それでも自分たちの頭で考えながらなんとか対応しようという姿勢が随所にみられ、とても感動いたしました。」との言葉をいただけました。
■フィリピンでの普及活動実践
こうしてブラッシュアップした企画を携えて、9月下旬から10月上旬にかけて、フィリピンを訪れ、実際にフィリピンの村の子供達に向けて手洗い普及活動を実践しました。
集まったのは4、5歳から12、3歳くらいの子ども達30名ほど。地元の高校生の協力も得つつ、英語とタガログ語を用いた手洗いに関するミニ講座、タガログ語での手洗い歌の指導、実際にみんなで石鹸を使って歌を歌いながら手洗い、という流れで20分ほどの普及活動を実施しました。
・直前準備
現地の高校生にも加わってもらい、現地語(タガログ語)への通訳をしてもらったり、一緒に手洗い歌を歌ってもらうことにしました。
・手洗いミニ講座
手洗い歌の前に、ばい菌への注意喚起や手洗いの大切さを、インタラクションをとりいれつつ子ども達に伝えます。養護の先生にいただいた、手のひらのばい菌の画像を見せる工夫も取り入れていました。
・手洗い歌の指導と実践
歌詞を見ながら試しに一度みんなで歌い、さらに1フレーズずつ手洗い動作を含めて練習。その後、子ども達と石鹸を使いながらたらいで手洗いをしました。子ども達はみんなとても楽しそうに手洗いに参加してくれました。
使用した歌は、順天高校ALTのシェバ先生(フィリピン出身)のアドバイスも受け、既存の(普及してはいない)タガログ語の手洗い歌を選びました。調べ学習で学んだ「正しい手洗いのポイント」が歌詞の中で網羅されていることを確認して妥当性を判断し、取り入れることを決めていました。
手を洗えているか確認をして、おやつの時間にします。
・事後アンケート
手洗い習慣のことや手洗い歌の感想等を、選択式の質問で調査していきます。
大勢の子ども達がとても賑やかで、慌ただしく進行してしまい、じっくり歌を教えることやアンケートをとることができなかった反省点もあったようでしたが、普及活動で多くの子ども達が楽しそうに手を洗っていたり、その後も歌を口ずさんでいたりするのを見て、自分たちの企画が形となったことに安堵と嬉しさを感じている様子でした。 校内外の周りの方々の協力も得て進めてきていることから、自分たち自身にプレッシャーも少し課していたようです。
数ヶ月間の取り組みの努力が実った時間でした。派遣された生徒も、現地にはいかなくても過程の取り組みを共に行ってきた生徒も、みんなの活動の結果です。
■手洗いや公衆衛生に関する現地調査
フィリピンへ派遣された生徒は、普及活動の実践に加え、現地調査も行ってきました。
麗澤大学の内尾先生からフィールド調査について学んだことや、杏林大学の谷口先生からの「せっかくのフィールドワークなので、ぜひその場を見てもらえれば。家庭などに行ってみて実際に洗っているところを見るのが一番の調査。」との助言を生かし、フィリピンの様々な地域で手洗いの習慣や病気について尋ねたり、実際に水道まわりや手洗いの仕方を見せてもらったりしていました。

現地で手洗いの様子を見せてもらう
それらを通じて、「手洗いの大切さ自体は認識されている」「石鹸も使うと言っている」「でも実際は十分に洗えているとは言い難かった」「手洗いが対策となる病気以外も多いよう」など、想像していたこともそうでなかったことも含めて、様々な情報を現場から得てきました。
生徒達は、普及活動で一定の好感触も得た一方で、現地で見聞きした様々な事情や状況を踏まえて改めて考え、「手洗いを普及することの必要性がそもそもあるのかどうか」という根本の問いも含めて、課題を持ち帰ってきました。
現在は、今回の一連の活動を通じて知ったことや考えを共有・整理し、それぞれ論文執筆を試みています。
情報収集や企画の段階から含め、非常に密度の濃い活動となりました。
生徒がこの一連の取り組みで培った力を、「フィリピンの公衆衛生」のことに留まらず、これからの様々な活動につなげていけるよう発展させたいと思います。