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先が見通せない中での幸い( 12/23 第2学期終業式より )
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先が見通せない中での幸い( 12/23 第2学期終業式より )

コロナのふりかえり

 このコロナ感染症の世界への広がりを1年前に予想できた人は、おそらくいないでしょう。そしてその影響はあまりにも大きくまだ終息していません。それでも幸いに、中高生の皆さんは学校に通うことができています。生徒の皆さんはこの2学期の間学校によく通い、新しい生活様式の中でしっかり頑張りました。

 ただ最近、感染の広がりが再び大きくなったためにGO TOトラベルも一時休止となり、中等部の皆さんの旅行的行事も、延期や再延期になってしまいました。また感染経路の不明なことも多く、どこで感染者が出ても、誰が感染しても不思議でない状況になってきました。ですからたとえ皆さんが感染したり、濃厚接触者となっても慌ててはいけません。

 その際、今のところ自宅待機など行動制限されるのはやむを得ませんが、そもそも10代の人は感染しても無症状の人が多く、重症化する人も全くと言って良いほどいません。その原因は不明ですが、幸いに皆さん自身が直ちに命に関わるということではありませんから、コロナ騒動の初めの頃とは違って、落ち着いて学校生活ができるようになっている気がします。

 さらに今後、コロナが猛威をふるっても、世界的にはワクチン開発も進んでいますので、あと半年、あるいは1年程で社会全体が落ち着いた状況になると考えられています。とはいえ、このコロナ後の社会がどうなるか見えにくくなっています。実はコロナ騒動の前から、これからの時代は先が見通せない、ということが大きな課題になっていました。

新型コロナウィルス国内発生動向(厚労省 R2/7/15現在)

 

先が見通せない中で

 というのも最近、「人生100年時代」という言葉を聞くことが多くなっています。「2007年に生まれた日本の子供の50%は100歳まで生きる」ということを、イギリスのロンドンビジネスクール教授のリンダグラットン博士が言ったのが、その話題の始まりのようです。

 一方で、AIの進歩で世界の仕事の半分がなくなる可能性が高いということも、今では随分と知られる様になっています。こちらは同じく、イギリスのオックスフォード大学のマイケルオズボーン准教授等の研究結果ですが、さらに今回のコロナの影響で、仕事や学習のデジタル化がすごい勢いで進みつつあります。

 いずれにしても人生が長くなるのに、仕事がドンドンと新しくなってしまうのですから、先が見通しにくいことになってきました。そのためリンダ博士は、世界の子どもたちに3つのことを大切にするように語っています。それは常に高度な学びを続けること、人との関係を大切にすること、何事も創造的に取り組むことの3つです。

 図らずも皆さんは、このコロナの影響で学校が休校になっても、幸いなことにオンラインで授業を続け、多くの人と繋がる文化祭をオンラインで創り上げてしまいました。まさに、これからの時代がどう変化しても必要となる、リンダ博士がいう3つのことをコロナによって不自由になった中で体験してしまいました。

 

 

小さな町の本屋さん

 幸いなことに皆さんは多くの本で学ぶこともでき、オンラインで学ぶこともできますが、オンラインどころか一冊の本も買えない子供達が世界にはたくさんいます。高等部の英語クラスではカンボジアの子ども達に本を贈る探究プロジェクトを創りましたが、その様な子ども達にも思いを寄せて、最後に小さな物語を紹介します。

 このお話は順天堂大学医学部教授の樋野興夫先生が書いた本で紹介されています。がん哲学外来というがん患者の人たちの心の拠り所になっていることで知られ、人に寄り添うことに心を砕いておられる樋野先生らしい、可愛らしい小さなお話です。ちなみに「がん」は、毎年30万人以上の日本人が亡くなるという最大の病気です。

 

『これは、中欧の小さな町の本屋さんの話です。そのショーウィンドウには、いつも何冊かの本が開いて並べられていました。当時、本は大変高価なもので、誰もが買えるものではありません。ある時、一人のみすぼらしい服装をした少年がその前にやってきて、一冊の本を真剣に読んでいることに、本屋の主人が気づきました。  *中欧(中央ヨーロッパ):チェコスロバキアやハンガリーなど

 毎日同じところを読んでいてはかわいそうだと思い、翌日から1日ごとに本のページを捲ってあげる様にしたのです。少年は嬉しそうに毎日やってきて、ショーウィンドウ越しにその本を熱心に読み続けます。本屋さんからすれば売れ筋の本に交換したいところでしょうが、本屋の主人はその本だけはそのままにしておきました。

 どんどん読み続けて、とうとう最後のページの日がきました。それはクリスマス・イブの夜のことです。ページを読み終えた少年は少し寂しそうにその本を見つめ続け、ショーウィンドウの前から立ち去ろうとしません。その時、店の中から出てきた主人が、その本を取り出して少年に手渡しました。「よく頑張ったね。これは私からのクリスマスプレゼントだよ」』と云って。

 

 皆さんもこの少年の様に、毎日心から楽しみにしていることがありますか。続けていると、思わぬプレゼントがやってくるかもしれません。あるいは探究プロジェクトでまさにこの本屋さんの様になれるかもしれません。それでは、メリークリスマス、そして、静かな良いお正月をお迎えください。始業式でまた元気に会いましょう。

 

*Eクラスの探究プロジェクト(カンボジアの教育支援)はこちら

 

 

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