お知らせ

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10代にまつわる探究心 ( 8 / 29 第2学期始業式より )
コロナ感染の多くの謎
少し短い夏休みでしたが、皆さんはどうのように過ごしたでしょうか。GO TO派 それとも STAY HOME派? 皆さんの家族も悩ましい夏休みだったのではないでしょうか。それもこのコロナ感染症には多くの謎があるからかもしれません。1つは終業式の時にも触れましたが、10代の皆さんは新型コロナウィルスには感染しにくいということです。万一感染しても軽症者が多く、10代以下で亡くなった人は一人もいないようです。この傾向は海外でも同じです。
それではなぜ、3月から5月末迄の3ヶ月間も学校を休校にしたのでしょう。それはおそらく、毎年の冬に流行する季節性インフルエンザウィルスには、10代以下の皆さんが最も多く感染するから心配だということだったと言えます。それでは今回はなぜ感染しにくいのか、その謎はまだほとんど解明されていません。もう1つの謎は、日本を含む東南アジアの国々が欧米に比べて感染しにくい結果になっているということです。これもなぜなのかわかっていません。
それでもなお、できる限り感染しないように気をつける必要があります。というのも、もし感染したという検査結果が出ても、症状がない人も多いのですが、感染症予防の法律の指定により、移動が制限されたり、入院することを求められたりします。それに比べて、季節性インフルエンザでも日本だけで年間1千人以上の方が亡くなるのですが、入院などは義務付けられていません。どうもちぐはぐなので、厚労省がコロナ感染者の扱いを見直そうとしているようです。
統計学者ナイチンゲール
さてそれにしても、新型コロナウィルス感染状況に関する様々なデータが日々発表されています。感染者が多いとか少ないというだけならば、誰でもわかることですが、多くのデータが出ている割には、そこから何がわかるのか、科学的にわかりやすく、しかも誰もが納得できるように説明してくれる専門家の方はあまり多くないような気がします。ですから多くの人の理解にいつの間にかバイアスがかかってしまい、不安感だけが増大しているようです。
そんな中、最近注目を集めている人がいます。といっても丁度200年も前に生まれた人です。1820年にイタリアで生まれたイギリス人、フローレンス・ナイチンゲールです。看護師として世界的に有名な方ですが、白衣の天使というよりは統計学を駆使して医療看護のあり方を改革した理系女です。ウィルスなどの感染症の原因もわからない時代に、なんと換気の対策の必要性をデータで示して見せました。
ナイチンゲールは病院の建築をする際に、3つの提案をしたことでも知られています。一つはナースコールの呼び鈴、二つ目は暖かい食事を運ぶリフト、そして三つ目に新鮮な空気や太陽の光を取り入れることでした。また彼女は、17歳から19歳にかけてヨーロッパ各地を旅行して、フィールド調査で様々なデータを集めています。そして家庭教師から数学や統計学も学び、データを用いて誰でもわかるように伝える工夫をして、多くの人が思い込んでいる劣悪な看護現場の改革を成功させることができたといえます。

丸山教授のライブ講座「筆算をひろめた男(福田理軒)」
大学のライブ授業を観る
ところで現在、ほとんどすべての大学でオンライン授業をしています。そのオンライン授業で、このフローレンス・ナイチンゲールと、奇しくもナイチンゲールと同時代に生まれた本校創立者の福田理軒先生の2人について、それぞれ12回も連続講義をした先生がいます。武庫川女子大学の丸山健夫教授です。丸山先生は本校ホームページの「ドラマ福田理軒」の原作者として、演劇部の皆さんとともに自ら理軒先生の役で出演されています。
丸山教授は現在、同大学の情報教育研究センター長/情報メディア学科教授で、「身近なケースで学ぶ確率・統計」や「コンピュータ数学入門」、また「高校数学の教科書」など多くの本を書かれている方です。そしてナイチンゲールと理軒先生の二人にまつわる様々なエピソードを紹介するご自身の著作を元に、メディア情報の集め方や分析の仕方、発信の仕方などについて、このオンライン授業で多方面から実践的に取り上げておられることに驚きます。
そのオンライン授業は、YOU TUBEライブ配信の公開授業として配信されています。19歳で順天堂塾を創られた理軒先生について、情報メディア論的にどのように展開されるのか、私は大変興味をもって12回すべてのライブ授業を観てしまいました。その中で、動画のBGMには無料提供の音楽サイトDOVAがオススメだとか、資料の調査には国会図書館や公文書館のデジタル資料がオススメだとか、さすが情報メディア論ですね、実に楽しくいろいろと学ぶことができました。
10代にまつわる探究心
今日は、2学期の始業式にあたり、武庫川女子大の丸山教授がナイチンゲールと福田理軒先生について、オンラインのライブ授業で詳細に取り上げたことをお話ししました。それは10代の皆さんにまつわる話でもあるからです。ナイチンゲールは統計学を看護の世界で活かす探究を、理軒先生もまた、数学を現実の世界で活かす探究をした方です。
しかもそれらの探究は、いずれも10代の時に始まっているのです。コロナの感染が10代でなぜ少ないのか今はまだわかりませんが、まさに10代の皆さんがそれは何故かと深く考えたとしたら、それは探究のはじまりです。将来、自分の探究は10代のあの時にはじまったということになるかもしれません。様々なことへの探究を深めて欲しいと思います。
わずか18歳で将棋の二冠を勝ち取った藤井聡太さんは、最初のタイトルを獲得した17歳の時に、「探究」という言葉を座右の銘のごとく示してくれました。皆さんにとっても、それぞれの「探究」を深める2学期となることを期待しています。