お知らせ

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社会に貢献する探究( 2/16 全校集会より )
SGHの研究発表
今日は、中1,2年生はマラソン大会のため、中3~高2までの一部の生徒による全校集会となりました。一昨日、SGH報告会が開かれて、後程ご紹介するフィリピンのラサレットスクールからの生徒の皆さんも参加するワークショップもあり、様々な発表が行われました。
とくに今年は、SGH指定校としては5年目の最終年度に当たりますので、フィリピンをはじめとした海外研修などでSGH探究活動をしてきた皆さんのプレゼン発表、さらにSクラスの理数探究やEクラスの英語探究などの成果も発表されて、多くの会場を使って行われました。
また、生徒の皆さん同志や先生方、外部の方による評価をしてもらうことを重視しておこないましたが、実は生徒の皆さん自身が評価者になると、探究学習のプレゼンには何が大事かも、いろいろと分かって学べることが多かったのではないでしょうか。
たとえば、課題研究のテーマがあるのは当然としても、まずはどのような仮説、つまり予測を立てていたか。その上で信憑性のある調査や実験が行われていたか。結果が予測と違っていても、それをきっかけに次の探究につなげることができていたかなど、どうだったでしょうか。
プレゼン力の競争
ところで、NHKの番組で爆笑問題が京都大学にある研究所を訪ねていました。そこでiPS細胞を発見してノーベル医学生理学賞を受賞した山中伸弥教授に会うためです。
爆笑問題の二人はそこで、なんとiPS細胞を作らせてもらっていました。それにしても、それがあまりにも簡単にできるので驚きました。iPS細胞は、人間の卵子に近い細胞で色々な臓器になってくれる可能性があるなど、様々な医療に用いられる希望を与えてくれているものです。
そんな大発見をした山中先生は、アメリカの研究所に留学しましたが、そこでプレゼンテーション、ディベート、デイスカッションを大切にしていることを学んだと言います。とくにプレゼンは1回2時間を毎週2回20週に渡ってトレーニングされたそうです。
プレゼンの様子をVTRに撮って、仲間が身振り手振りまで全く遠慮することなく、批評してくれる。相当鍛えられたそうです。そうやって、自分の考えをアッピールしなければ、中身がどんなに良くても世界との競争では勝てないということを学んだそうです。
さらにいうと、単にプレゼン力がついたというのではなく、研究の進め方が変わり、論文の書き方が変わり、言い過ぎかもしれないが人生も変わったと思うというのです。確かに、爆笑問題の二人を相手にして、笑顔で分かりやすく応対している魅力的な方だなと思います。
正しい仮説の割合
さて、そういう生物科学者の山中先生ですが、もう一人ノーベル物理学賞を受賞した益川敏英先生との対談本で、仮説についてのお話が興味深いものでした。仮説というのは、先ほどもお話ししたように研究の結果の予測ですが、科学研究で実験や調査をして、それが正しいとされるのは2割にも満たないのではないかというのです。それが2人の意見です。野球で3割打者ならすごいのですが、研究の道も簡単ではないということです。
また『アメリカでは今も人口の約半分が「進化論」を信じていないが、日本人が「進化論」を信じるのもある意味では怖い。』と益川先生が言うと、山中先生が『ハイ、なぜなら「進化論」は、まだ誰にも証明されていないからです。なぜか日本人は、人間はみんな猿から進化したと信じていますが、証明はされていない。そのうち、ダーウィンの「進化論」は間違いだった、ということになるかもしれません。』と応じます。つまり正しいかどうかもわからない仮説も多いというわけです。
実は一般の人だけでなく、専門家も自分の仮説を正しいと思い込んでしまうことも少なくありません。多くの皆さんも乗ったことのある飛行機は1900年頃にライト兄弟が、エンジンを載せて飛ばしたことで知られています。しかし、ライト兄弟が飛ばそうとすると、あの重たい鉄の塊のようなエンジンを載せて空を飛べるわけがないと、一番強く主張したのは、当時の物理学者たちだったそうです。
いや、絶対飛べると思って、自分たちの仮説を命がけで実証したライト兄弟、すごいですね。新しい乗り物ですから、こちらは発見というよりも発明ということかもしれませんが、やはり自分のアイデアを証明するまでは、仮説に過ぎないものです。それでもたとえ、仮説通りにならなくとも、また新たなアイデアで実現しようと探究すること、それが探究の醍醐味ですね。

*参加対象は大学生以上です
社会に貢献する探究
山中先生は、小学校から高3の夏まで柔道をやっていましたが、家の経済事情で2学期から慌てて受験勉強をして、神戸大学の医学部に進学できたそうなのです。本校でも同じように、高3の夏まで野球をやっていて、秋田大学の医学部に進学した先輩がいます。今までも紹介したことのある宮地くんです。
宮地くんは、この12月に日本学生支援機構から、社会貢献分野で大賞を受賞しました。アフリカのザンビアに診療所を作るというプロジェクトを医学部の友人たちと実現しようとしていることで、評価されたわけですが、その授賞式が東京で開かれたのに、わざわざ秋田大学学長や秋田県医師会の代表が授賞式にやってきて祝福してくれたそうです。
ザンビアに診療所をつくるというのは、発見や発明というより、貢献といったらよいでしょうか。医療を社会に役立てるプロジェクトを、彼はいつころから考えたかというと、医学部をめざし始めた高校生の時だったと確か聞きました。彼には受験勉強をする確かな目的があった。というのも大学に入ってすぐにそのプロジェクトを立ち上げましたから。
実は、彼が高校生であった時、山中伸弥先生がノーベル賞を受賞しました。そこで、英語で書かれた論文の要約記事があると知ると、すぐに彼だけがそれを手にして、読み込んでいたことを思い出します。iPS細胞で病に苦しむ人を救いたいという山中先生、その影響を確かに受けてザンビアで汗を流そうとしている宮地くん、今度は誰が社会に貢献する新たな探究を始めてくれるでしょうか。
発見や発明のほかにも、新たな仕組みをつくる貢献ということは、SGH探究学習のねらいとしていたことでした。「アジア・太平洋地域における教育的支援プロジェクトの実践的研究」を大テーマにして、探究学習をしてきたSGHの活動は、これからも生徒の皆さんと一緒に探究していくことになります。